夜、静かに眠っている息子のそばを通ったときだった。
物音に気づいたのか、両手をばっと上げて、びっくりしたみたいにくるっと寝返りを打った。
たったそれだけのことなのに、思わず足を止めてしまう。
なんて可愛いんだろう、と、胸の奥がじんわりあたたかくなる。
下の歯が少しだけ生えてきて、気まぐれに「まんま」と言うようになった、まだ0歳8ヶ月の小さな体。
その仕草ひとつで、こんなにも満たされる。
「今ある幸せに気づくことが大切」だと、どこかで何度も聞いてきた。
でも、それは少し遠い言葉だった気もする。
息子が生まれてきてくれてから、その言葉は、もっと手触りのあるものになった。
考えるものじゃなくて、ふとした瞬間に、体でたしかに感じるものになった。
子どもという存在は、きっとわかりやすい。
自分から動いてくれて、笑ってくれて、こんなふうに日々を揺らしてくれる。
でも、子どもが生まれる前だって、
ちいさな幸せは、きっと同じようにそこにあった。
朝、窓から差し込むやわらかな光。
友人にもらったクッキーの、バターの香りと優しい甘さ。
ただ、それに気づけていたかどうか。
ちゃんと立ち止まって、味わえていたかどうか。
気づかないまま、通り過ぎていたものも、きっとたくさんあった。
この感覚を、どう言葉にしたらいいのかは、まだよくわからない。
誰にでも同じように伝えられるものでもないのかもしれない。
それでも、ひとつだけ、はっきりしていることがある。
この子にかけたい言葉は、きっとずっと変わらない。
いつだって、「ありがとう」。
何もできなくても、何も話せなくても、
そこにいてくれるだけで、ありがとう。

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